About Functional Training

ファンクショナルトレーニングについて

このページでは「ファンクショナルトレーニング」の概念、メソッド、プログラミングなどについて、「ファンクショナルマスター」岩沢陽介が解説いたします。
トレーナーの方、そしてフィットネス愛好家の方に参考にしていただければ幸いです。

1.ファンクショナルトレーニングとは

ファンクショナルトレーニングの概念そのものは(その名称が使われたかどうかは別にして)、人類がトレーニングを始めた極めて初期の段階から存在するものです。

高く飛ばなければいけないから高く飛ぶための訓練をする。

重いものを持ち上げなければいけないから重いものを持ち上げるための訓練をする。

正確に獲物を捉えるために槍を投げなければいけないから、正確に槍を投げる訓練をする。

必要に迫られるから、その目的を達成するための機能的な(ファンクショナル)トレーニングをすることこそ、まさにトレーニングの原点です。

しかしその後、人々の関心はより美しい体を求める方向に変化しました。

ミケランジェロのダビデ像を例に出すまでもなく、それは人にとって自然な願望です。

そして1970年代からアメリカを中心に急速に一般人に高まったフィットネスブームとそれに伴うウエイトトレーニングの普及はさらにそれに拍車をかけました。

その頃、実際にジムで行われて来たトレーニングはマシンを使って、部位別にそれぞれの筋肉に「効かせる」方法であり、頻繁にジムに通う人にはトレーナーが日によって「今日は胸の日」「今日は脚の日」などのようにトレーニング部位を変える「スプリットルーティン」というプログラムを勧めていました。

これらは全てボディビルから流用された考え方です。

これに関しては1950年代から雑誌、映画、サプリメント、大会運営、ジムとの連携などボディビルとフィットネスの普及を多角的に推し進めたジョー・ウイダーの影響は非常に大きなものだったと考えられます。


そのボディビルメソッド的なウエイトトレーニングが主流だったフィットネス業界もこの10数年で大きく変化しました。それはアスリートのトレーニングが変化したことが大きな要因でしょう。

それはアスリートにとって、どんなに部位別に筋肉を強化しても「part to whole(部分を積み重ねて全体を高める)」事が実際には難しく、競技能力の向上には直結しない事が実感されて来たからです。その間、欧米を中心に研究者による書籍、例えば "Functional Training for Sports" Michael Boyle、"Athletic Body In Balance"Gray Cookなどが出版され、その概念やメソッドが普及する一助となりました。

また2005年に発表された「TRX Suspension Trainer」がそのエクササイズの多様性、手軽さ、充実した教育制度などにより急速に広まった事で「ファンクショナルトレーニング」の代名詞のようになり 、加速度的にアスリートだけでなくフィットネスクラブにも取り入れられ、一般の愛好家も「ファンクショナルトレーニング」を取り入れるようになったのです。


人の運動機能とは多角的、複合的なものです。

フィットネスの構成要素で考えても

・筋力、筋持久力

・全身持久力

・可動性、柔軟性

・安定性

・身体組成

・敏捷性

・平衡性

・協調性 etc

など多岐に渡ります。

また上記の「フィットネスの構成要素には「動きの質」は含まれていません。

どんなに体力レベルが上がったとしても「動きの質」を向上させなければ高いパフォーマンスは望めません。

そして全てのパフォーマンスは各々が単独ではなく複合的に働き発揮されます。

さらにその能力が的確に発揮されるかは「脳と心」のコンディションに大きく左右されますし、また食事など生活全般で変わります。

例えば同じ「格闘競技」だとしてもボクシングと柔道では求められる能力は変わります。「陸上競技」でも長距離走、短距離走、投擲では違うパフォーマンスを発揮する必要があります。

もちろん全てに共通する要素もあります。

それが後述する「基礎動作」の質であり、またさらにベースになるのは「体」「脳」そして「心」の健全で健康な状態です。

それらがベースにあり、個々の対象者に対して、それぞれの求められるパフォーマンスの違いを分析し、理解した上で、求められる要素の全てを多角的に向上させるもの。


これがファンクショナルトレーニングです。


2.なぜファンクショナルトレーニングなのか?

あらゆる人にとって、目的とする機能を獲得するためのトレーニングがファンクショナルトレーニングだと言えるでしょう。 

ではその最高峰とは何か、それは軍隊で あり、オリンピックやメジャースポーツ を頂点としたチャンピオンシップスポー ツです。 そこでは「勝利」こそが最重要課題であ り、それには莫大な経済活動が伴います。 

ですから真に効果的なファンクショナル トレーニングとは何かについての研究には多大な資金とエネルギーが費やされ、常に結果が求められ、アップデートし続けられま す。 

だからこそファンクショナルトレーニングの理論は今(あらゆるトレーニングメソッドのベースとして取り入れられ、そのメソッドを進化させているのです。


そしてそれは決してアスリートだけのものではありません。

現代人の生活は彼の時代よりも複雑化し、体を使う機会はさらに減り、ITの発達と共により多くのストレスにさらされています。 

だからこそ人の機能性を高めるためのトレーニングシステムとして今最も最先端の科学的リサー􏰁に基づくファンクショナルトレーニングの方法論を人々の健康のためのエクササイズに取り入れることによって、より効率が良く効果性の高い運動ポログラムを構築する事ができます。

単に「筋力を高める」「持久力をつける」と行った体力面を向上させるだけでなく、動きの質を向上させ、脳の能力を高める事ができるァンクショナルトレーニングの理論と実技は、全ての方達の健康づくりのための新しいメソッドだと言えるでしょう。

3.ファンクショナルトレーニングと動きの連動性

実際の日常動作やスポーツの動作は全身を連動的・複合的に使うものであり、それを運動連鎖(=キネティックチェーン)といいます。

つまり全身の各部が鎖の輪のようにつながり、ある特定の動きをするためにその一つ一つの輪が協力して一つの動きを作り出すのです。 

動きの質を向上させるならば、一般的にその連動性を高まることを念頭にエクササイズ を選択するため、最終型は複合動作になるのです。 

しかしもしその輪の中で一つでも不完全な弱い輪があったとすれば、目的とする動作そ のものが弱い輪の出せる最大の力に依存することになります。 

例えば10個の輪をつないで鎖を作った場合、その全てが弱いプラスチックであった場合 と9個が強い鉄で1つだけがプラスチックの鎖を比較すれば、どちらが強い鎖なのでしょう?

実は強さはどちらも同じで、弱いプラスチックの鎖が切れないで持ちこたえられる最大の力しか出すことはできないのです。

この一個のプラスチックの弱い輪のように、運動連鎖の中で弱い部分のことを「ウィークリンク」と呼びます。

その場合、そのウィークリンクだけに集中して強化したり、可動域を高めるためのエクササイズが必要です。それは個々の部分を強化するので複合的な動作ではない場合が多いのですが、それをやることでそれぞれの「輪」の強さを均質にし、最終的には複合動作につなげることができるのです。

このようにウィークリンクを改善するために、ファンクショナルトレーニングらしい複合動作のエクササイズではなく、一見ファンクショナルトレーニングとは言えないような一部だけの動きや一部位のみの筋力などを高めるエクササイズを選択することも必要 です。

このような考え方を「ファンクショナルパラドクス」といいます。

このパラドックスというのは決してネガティブな意味ではなく、ファンクショナルトレーニングの多様性を考える際の重要な概念を一つです。