天心、ボクシングデビュー戦に思う
もうご存知の方も多いと思いますが、キックの神童・那須川天心選手のボクシングデビュー戦、日本バンタム級2位の与那覇選手と6Rフルに戦って圧倒的大差で判定勝ちしました。
👏👏👏👍🏻👍🏻👍🏻
僕は彼がキックデビューの時から大好き。
そして応援するだけでなく、徹底的に彼の技術を研究してきました。
もちろん今日も絶対に天心選手が勝つと思っていましたが・・・
その予想を遥かに上回る技術の天心流ボクシングを6ラウンドも見ることができて、もう目福👀
途中、面白過ぎてゲラゲラ笑っちゃいました。
たぶん4Rの後半のラッシュでKOできなかった事で天心陣営は「もう無理に倒さなくて良い」と決めた感じで、6R目一杯動いて、実戦であれこれ試していたのではと思いました。
今日の天心選手の試合。
僕としては「格闘競技者はこうあって欲しい」という動きを体現していて、最高の出来だったと思います。
・格闘競技は街喧嘩ではない。
・勝つ事が最優先事項
・絶対に先にポイントを取られない
・相手の攻撃を貰わず自分の攻撃だけを当てる
・そのために最も重要なのはディフェンスとフットワーク
・距離と角度で攻撃をもらわないのがディフェンスの第一段階
・理想の闘いとは日本の闘牛ではなくスペインの闘牛
・ルールで許されている武器は全て使う
・〇〇とはこういうもの、〇〇はこうあるべきというジャンルやスタイルの押し付けは思考停止
これはあくまでも僕の中での格闘競技者の理想像ですが。
今日の天心選手はまさにそんな戦い方を見せてくれました。
何よりも位置取りが秀逸。
キックボクシングは蹴りもあるため、どうしても床反力を利用したステップが多くなりますが、やはりそれでは無駄な運動量になり、長いラウンドには向かない。
そこで徹底的にステップを変えたのでしょうが、それをする過程で、ボクシングの基本にはないようなステップワークも「これもいける、これも使えそう」と創造していったのでしょう。
別にあれはパフォーマンスでも挑発でもなく、天心オリジナルのポジショニングをいろいろと試したんでしょうね。
そして途中でマンガみたいなアッパーを空ぶった時はすぐにクランチしましたが、明らかに笑っていました。
きっと一瞬「ここでマンガみたいなアッパーで倒したらスゲーだろうなぁ」って思っちゃったらやらずにはいられなかったんでしょうね。
それでミスショットだったので「そりゃ、そんなの当たんないよなぁ」と苦笑いって感じでしょうか?
リングサイドの関係者っぽい年配者たちはそんな天心選手の一方的展開や試合後のマイクにも苦虫を噛み潰したような顔してましたし。
きっとネットでは「KOできなかったからパンチ力ない」とか「相手に対して舐めてるようなパフォーマンスは嫌い」だとか頭の固い、伝統と権威と経験論の大好きな人たちが批判しているんでしょうねぇ。
でも天心はそんなの慣れっこなんですよ。
キックボクシングを詳しく知らない方はわからないでしょうが、天心は中学生の時から並外れたスピードと距離感、ディフェンステクニックと一撃で倒す殺傷能力、さらにミドルキックの蹴り合いというムエタイスタイルではなく、空手の立体的な蹴りとボクシングテクニックを組み合わせて、独自の天心スタイルを作って、キックボクシングに革命をもたらした選手。
だから古いスタイルに固執したキック関係者は最初批判的だったんです。
いや、もしかしたらまだそう思っている人も多いのかも。
でも明らかに天心前と天心後で日本のキックは変わった。
そして今回天心は自ら「那須川天心vsボクシング」というアングルを作ることで、敵を作っても良いから新しい景色を見せようとしている。
そして試合前日のインタビューで「格闘技の強さを見せる」と言い切りました。
ボクシング関係者やマニアにとって、ボクシングは聖域。
あくまでも格闘技とは別物という価値観で成り立っている世界。
だから批判は想定内。
でも批判されても自分の言葉で、自分の感覚を伝えたい。
それこそが那須川天心。
だからこそオレの物語は面白い。
そう思っているのでしょう。
それを見せることで閉塞したこの世界で、予定調和に押し潰されている人たちに、そこから抜け出すエネルギーを与えたい。
彼は真剣に、マンガの主人公のように、そう思って行動している。
二、三日前のTwitterで彼は呟いていた。
「頑張れって言ってくれて嬉しいけど、オレだけじゃなくてみんなも同じように頑張れ」と。
それが単なる言葉だけでなく、ボクシングデビュー戦で、ボクシング1年生ではあり得ないクリエイティビティを発揮することで、本業の格闘競技の場でそれを体現して見せた。
そこにいたのは、やはりあの頃から僕が大好きでい続けた那須川天心そのものでした。
「選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にあり」
そう言ったのは太宰治でしたが。
天心ならきっと持ち前の明るさで軽々と乗り越え、今まで誰も見たことのない景色を見せ続けるでしょう。
それがなんなのか?
ワクワク楽しみながら見続けたいと思います。
0コメント