格闘家のトレーナーとして
トレーナーとして様々な格闘家の方のトレーニング、コンディショニングのアドバイスをしている。
当然アスリートへの一般論ではなく、その選手の競技における戦い方を見た上で必要な能力を高めていくための内容を伝えている。
それは結果として必然的に技術に対するアドバイスもする事になる。
その選手の知らない技術。
それは確かに僕の弟子がムエタイにおいて日本チャンピオン、そして世界チャンピオンになる事を助けた技術。
選手が引退した10年近く前に、もう誰にも教える事もないと半ば封印していた技術。
しかしそれはムエタイではない。
ボクシングでもキックボクシングでも空手でもない。
流派やジャンルを問わず、人を殴る、蹴るという動作をメカニカルに追求し、武器として練り上げられた技。
それは対象が人である限り、人の心を、脳を欺き、陥れ、追い込むような心理的脳科学的要素を色濃く持ち合わせている。
ある意味卑怯、正々堂々とか真っ向勝負とは違う。
でもそれが武術なのだ。
それがこうして様々な競技の中で少しでも強くなる事を心の底から渇望する選手達の助けになる。
選手から「動画に撮っても良いですか?」と聞かれる。
秘伝でも何でもない。
「いくらでも撮ってください」
そのために技をデモする。
もう今は毎日毎日血の滲むような稽古をし、技を磨き抜いているわけではない。
だから内心は「恥を忍んで」技を見せる。
それでも僕の技術が少しでも選手の勝利につながればと・・・
この選手達が将来誰かを教える日が来るかもしれない。
もし僕という人間の物理的な形は無くなったとしても、技は有形のものとして残り、さらに発展するだろう。
もう50年近く「どうしたら人を殴れるのか?人を倒せるのか?」そればかり考え、技を磨いて来た。
ある意味狂気のようなこの人生も、こうして誰かの夢を叶え、その人達の人生を少しでも充実した豊かなものにする助けになるなら、一片の後悔もない。
昨晩、そう思いながら心からの感謝の気持ちと共に眠りについた。
そして迎えた朝。
ワークアウトだけでなく、少しだけ稽古をしようと思う。
あの少年時代に戻ったかのように。
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